【特別インタビュー】
コロナ禍における医療機器産業の動向について

【特別インタビュー】<br> コロナ禍における医療機器産業の動向について

コロナ禍でも成長を続ける!医療機器産業の動向とは?

昨今、新型コロナウイルス(COVID-19)が猛威を振るい、様々な業界に影響を与えています。そのような中で医療機器業界の動向について気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

今回はコロナ禍における医療機器産業の動向について調査をされた、一般社団法人日本医療機器産業連合会(以下、医機連)の丸山様にインタビューを実施し、詳しく話を聞いてきましたので、その内容をまとめたいと思います!

 

【今回お話を聞いた人】

 

一般社団法人日本医療機器産業連合会

医療機器政策調査研究所 主任研究員

丸山 耕志郎さん

 

医機連医療機器政策調査研究所について

――丸山さんが所属されている医機連医療機器政策調査研究所につきまして簡単に教えてください。

丸山さん「現在私が所属している医療機器政策調査研究所では、主にシンクタンク機能や、医療機器に関連する情報を収集して関係者に発信するといった活動を行っています。また、医療機器業界の動向なども調査をし、医療機器に携わる方のお役に立てるよう日々活動しています。

 

コロナ禍における医療機器産業の業績動向

▲コロナ禍における医療機器産業の業績動向(2019年度、2020年度通年比較)

 

***

調査は上場している医療機器企業46社が対象。

医療機器以外の事業セグメントを有する企業は、有価証券報告書で公開されている医療機器を含む最小セグメントのデータを集計対象としている。

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――医療機器業界における新型コロナウイルス蔓延後の影響について、調査結果を教えてください。

丸山さん「新型コロナウイルスが蔓延した2020年度において、上場している医療機器企業46社から公表されたIRデータからを売上高、営業利益を4半期ごとに集計した結果、4~6月期、79月期は、売上高、営業利益ともに前年同期比マイナスでしたが、10~12月期、13月期は、売上高及び営業利益ともに前年同期比でプラスに転じました

 

年間トータルでは、売上高は約5.3兆円となり前年比3.2%のプラス、営業利益高は約7,400億円となり、前年比10.3%のプラスとなり、増収増益となりました

 

これらの指標から見ると、今現在も続くコロナ禍においても医療機器産業全体としては、着実に成長できた1年であったと言えるかと考えます。

 

――コロナ禍においても増収増益を達成した主な要因についてはどのようにお考えでしょうか。

丸山さん「2020年の4月から9月にかけては、コロナ拡大による受診・検診控えや手術の延期などの影響を受け、売上高、営業利益ともに前年同期比でマイナスになったと考えています。

 

しかし、10月以降になると、9月までに比べてその影響が緩和していき、医療機器の需要が高まったことが増収増益を達成した大きな要因ではないかと考えています。

 

コロナ禍であっても医療機器業界は成長!

――医療機器業界はコロナ禍においてもとても活躍をしていますよね!この活躍も成長の後押しをしているのだと思っていますがいかがでしょうか。

丸山さん「そうですね、コロナ禍でも医療現場のニーズに応えようとしたことももちろんあると思います。

 

医療機器メーカーにおいては、コロナ禍により国内外で需要が増えたパルスオキシメータ、人工呼吸器、酸素濃縮装置などの生産体制の強化や、ワクチン接種の際に用いるシリンジの開発・生産など、期初の生産計画を変更して、医療現場のニーズに応えていったことの積み重ねが産業全体の成長につながったのではないかと考えています。

 

また、製品を作るだけでは、医療現場には届きません。流通関係のみなさんとも一丸となって、医療現場に安定的かつ、迅速に医療機器を提供するために、現場の要望に応えるきめ細かいサービスの提供に尽力した点も欠かせなかったと考えています。

 

コロナ禍における医療機器業界に変化

――コロナ禍で様々な業界に変化があったかと思います。医療機器業界ではどのような変化があったか教えてください。

丸山さん「他業界と同様に、働き方に関してテレワークの推進や、出張の代替としてオンライン会議などが積極的に行われています。

 

医療機器業界特有の話ですと、病院での感染対策に必要な医療用マスクや医療用手袋といったPPE (Personal Protective Equipment:個人防護具)製品をはじめ、治療や患者管理に必要な人工呼吸器、生体情報モニタなど医療機器の需要が各国で高まる中で、一部では輸出入の制限等も起き、緊急時の国内生産、安定確保の重要性が高まった1年でした。

 

そのような中で各社が工夫を凝らしたり、同業界他業界問わず様々な企業と連携をしたりして、生産体制を強化したという前向きな変化がありました。」

 

医療機器業界における今後の展望

――丸山さんが考える医療機器業界の今後の展望について教えてください。

丸山さん「国内の人口は、少子高齢化が今後も進んでいき、若者よりも医療を必要とする高齢者の割合が増えていくことが確実視されています。

 

そのため、医療費の財源、および医療を提供する人的な資源の面からも、医療全体として、適切な医療をいかに効率的に提供するかということがより重要になると考えます。

 

その中で、医療の効率化に向けて医療機器の果たす役割は大きいと考えています。」

 

――医療機器の活躍の機会が今後も増えていきそうですね。

丸山さん「はい、そう思います。既存の医療機器はもちろん、今までにない、新たな価値を提供する多様な医療機器が登場し、人々の健康を支えることが期待されています。

 

例えば、昨年承認された、禁煙の治療補助を目的とした医療機器のシステムの一部に、患者が自宅で用いるスマートフォンアプリが含まれています。医療機器と言えば、病院内で医療従事者が使うイメージがあるもしれませんが、臨床上の効果を明らかに示せれば、スマートフォンアプリでも医療機器として認められる時代が来ています。 (※利用には、医師による処方が必要です。)

 

今後は、プログラム医療機器(米国ではSaMD: Software as Medical Device)と呼ばれる分野の1つとして、スマートフォンアプリの形態で、医師が対面にいなくても、患者が用いることで治療補助として患者の行動変容を促す製品の発展も期待されています。この製品は一例ですが、10年前、20年前にはないコンセプトの医療機器が登場してきており、医療機器とヘルスケアの境界線が動いていることを実感しています。」

 

――医療機器はこれからも進化を続けていくということでしょうか。

丸山さん「そのように考えています。今後も、より一層の価値の提供に向けて、製品・サービスが高度化、複雑化していくことが考えられます。そして、その進化を加速させるであろう動きとして、様々なサービス、技術と医療との融合があるのではと考えています。

 

例えば、医療用の手術支援ロボット開発において、5G回線を用いた遠隔操作の実証実験に大手通信会社が協力したり、オンライン診療サービスでは、大手ケーブルテレビ会社が自社のインフラを使用したサービスを提供したり、色々な動きが出てきており、医療機器企業以外との協業がこれまで以上に注目されるのではないかと考えております。

 

医療機器の進化において、今までのビジネスモデルに捕われない柔軟な考え方が必要になってきているのかもしれません。」

 

メッセージ

――色々とお話頂きましてありがとうございました。最後に学生の皆さんにメッセージをお願いできますか。

丸山さん「新型コロナウイルス感染症の影響で世の中に大きな変化があった中、医療機器業界も変化に対応し、医療従事者の方々と共に皆さんの健康を支えるために日々尽力しています。このことからも、医療機器業界の仕事は社会貢献度の高い仕事であると感じています。

 

仕事を通じて「社会に貢献したい!」、「健康を支えたい!」という想いを持っている学生にはとてもやりがいのある業界だと思いますので、興味を持っていただけると嬉しいです。

 

また、これからも医療機器業界は多くの分野の知識を活かして製品の開発やサービスの提供を行っていくと思っております。ぜひ様々な分野の勉強をされている学生の皆さんにこの業界にチャレンジしていただきたいです。」

 

 

いかがでしたか?

 

コロナ禍における医療機器産業の動向について、ご理解いただけたのではないでしょうか。

 

医療機器業界の各企業は、コロナ禍においても皆さんの健康を支えるために、医療従事者の方々と共に日々尽力し、その結果医療機器業界市場が全体的に成長をすることができました。

 

医療機器業界はこれまで安定的に成長を続け、そして今後も成長していくと言われています。

その成長をより加速するためには、様々な分野の勉強をしている若い方の力が必要です。

 

ぜひ医療機器業界の成長をこの記事をご覧になっている皆さんと共に創っていければうれしく思います。

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