【コラム】
医療機器業界で働く人の待遇は?

【コラム】 <br>医療機器業界で働く人の待遇は?

 就活生の皆さんが企業を選ぶうえで気になるであろう待遇面。「医療機器メーカーで働くとどのくらいの給与がもらえるのだろう…」と疑問に思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

 今回はそんな医療機器メーカーの待遇について、有価証券報告書を基に待遇面の調査を実施したMEジャーナル編集長 半田良太さんに教えてもらいました。

医療機器産業の待遇面は?

 これまでの医機なびのトピックでも紹介されているように、少子高齢化社会の進展で、医療機器産業に対する注目度が高まっています。日本政府も、「次代の日本経済けん引役」となるよう、今後の飛躍に期待感を示しています。

 

 政府は、日本の中小企業の「モノづくり力」を活かし、医師のきめ細やかなニーズに応えた医療機器を開発するための「医工連携」に力を入れています。昨今は、医師の画像診断業務をサポートするAI(人工知能)や、生活習慣病などで治療効果を高めるスマートフォンのアプリケーション(治療用アプリ)の開発を促すため、産業振興策や規制緩和策を打ち出していることからも、医療機器業界の未来は明るいといえそうです。

 

医療機器メーカーの平均年収は700万円台 全業種平均の436万円を上回る

 このようにポテンシャルを秘める医療機器産業は、「これまで治療できなかった患者さんを治すことができる」「過重労働を強いられる医療従事者の負担を軽減できる」といった、チャレンジングでやりがいのある仕事といえますが、一方で就職を希望する学生の皆さんにとっては、「待遇面」がどうなっているのかも気になると思います。結論から申し上げると、国内で株式を上場する医療機器メーカーの平均年収は「700万円超」となっており、業種別にみても高収入の部類に入ります。間違いなく業務面でも待遇面でも、魅力的な産業と言えそうです。

 

 この度、証券取引所に株式を上場する医療機器メーカー(兼業メーカーも含む)50社の有価証券報告書を一定の条件下で調べたところ、2020年度の社員1人あたりの平均年収は「713万円」でした。

国税庁の「民間給与実態統計調査結果」をみると、2019年の給与所得者約5,255万人の平均年収は436万円、正規従業員に限定しても503万円です。医療機器メーカーの給与水準は、全業種平均よりも200~300万円程度、高い水準であることがわかります。

 

業種別でも「電気・ガス・水道」に次ぐ水準

 

 それでは業務別にみるとどうでしょうか。「民間給与実態統計調査結果」では全産業を大きく14業種に分けていますが、医療機器産業は、トップの「電気・ガス・熱供給・水道業」の824万円と、これまで高額と言われてきた「金融業・保険業」の627万円に割り込む形になります。電気、ガス、水道といった、生活に欠かせないインフラ業種に次ぐレベルの、高い年収を得ていることが確認されました。

 

 製造業全体では513万円です。医療機器産業はちょうど200万円も高く、高付加価値型の知的集約産業の面目躍如といったところでしょうか。

 

医師を除く医療従事者を上回る好待遇

 「患者さんへの貢献」という意味で、医療機関で働く職員とも比較してみました。厚生労働省が一般病院に勤務する医療従事者の給与水準などを調べた「第22回医療経済実態調査」によると、一般病院に勤務する職員の給与(20193月)は、医師1,641万円、歯科医師814万円で、医療機器メーカーの職員は医師に次ぐレベルにあります。医師以外に医療機器を取り扱う看護師は455万円で、画像診断機器を扱う診療放射線技師や、各種検査を担う臨床検査技師などを含めた医療技術員は408万円。さらに病院で庶務や、医療機器などを含めた購買などを担当する事務職員の方々は375万円にとどまります。

 

800万円台の5社 東証一部上場でグローバル企業が目立つ

 それでは医療機器メーカー50社の年収について、金額別の分布状況をみてみます。最上位の800万円台は5社、700万円台は17社、600万円台が11社、500万円台が14社、400万円台が3社となります。医療機器メーカーの中でも、比較的年収が高水準にあるのは、東京証券取引所1部上場で、国内にとどまらず海外でも積極展開する、グローバル型の医療機器メーカーと言えそうです。ただ各社とも職員の平均年齢が異なるため、年収の高低だけで判断すると誤りが生じることがあるので、注意してください。

 

 ちなみに医療機器メーカー50社の平均年収713万円は、各社の医療機器事業(メディカル、ヘルスケア事業などを含む)の従業員のみを可能な限り抽出し、算出したものです。各社の平均年収を単純に50社で割った平均値は666万円となり、50社の中央値(25番目)は692万円となります。

 

 

【医療機器メーカー50社の平均年収の調査・集計の留意点】

調査・集計対象は、2020年4月期、6月期、7月期、8月期、12月期、21年3月期の有価証券報告書を提出した国内の株式上場医療機器メーカー。持株会社である富士フイルムホールディングスは医療機器以外の職員も含まれ、事業を営む子会社の状況も反映していないため除外した。画像診断機器事業を売却した東芝、日立製作所は、その他の医療機器事業を営んでいるが、集計対象に含めなかった。

 

 

<執筆者>

MEジャーナル編集長

半田 良太さん

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