AI医療機器って何?

AI医療機器って何?

はじめに

前回の記事で「プログラム医療機器(SaMD:Software as a Medical Device)」のご紹介をしました。今回はプログラム医療機器に含まれるものも多い「AI医療機器」についてご紹介します。

 

医療機器の承認審査を行う機関である独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の資料の中ではAI医療機器について、「主たる機能をAIの活用により開発されていることを明らかにして承認されたプログラム医療機器」と書かれています。

 

ここでは、AI医療機器の役割をご説明します。

 

AI医療機器って何?

2023年7月現在、日本で承認されているAI医療機器の多くが人工知能(AI)による画像認識能力を利用したもので、画像が多く使用される診断領域の製品が多くなっています。

 

「AI医療機器」は医師による病気の診断を支援するために、画像から病気の兆候や特徴を見つけたり、大量のデータを処理したりする役割を持つものが多いです。

 

AIは大量の『教師データ』と呼ばれる画像から、特徴量と呼ばれる分析すべき対象の特徴や特性を定量的に表す数値をディープラーニングで算出することを得意としています。

 

これにより実現された画像認識能力は人間を上回ると言われており、その認識能力を活用して医療における診断のお手伝いをするのがAI医療機器なのです。

 

なお、AI医療機器として実際に医療現場で使用できるようになるためには、薬機法に基づいた承認審査を受ける必要があります。

 

AI医療機器にはどんなものがあるの?

医師はレントゲンやCT、MRI、内視鏡などの体内の状態を見る動画や画像から病気の兆候がないかを診断します。

 

ただし、この診断には豊富な経験や知識、そして技術が必要です。

 

 

一言に病気の兆候と言っても、症状やその病変の見た目は患者さんによってさまざまで、かつ、早期の段階ではその兆候も非常に微細な病変であることもあり、見つけるのが難しいことが多いです。

 

また、人間の目で見る以上、診断能力に個人差があったり、場合によっては見逃されてしまっていたりすることもあります。

 

 

現在日本で実用化されているAI医療機器の具体的な例としては、新型コロナウイルス肺炎を含む感染性肺炎の感染有無を判定するAIや、インフルエンザの感染有無を判定するAI、内視鏡検査中に大腸のポリープを見つけるAI、胸部レントゲン写真から肺結節と呼ばれる影を見つけるAI、脳MRA画像から脳動脈瘤と呼ばれるコブを見つけるAIなどさまざまなものがあります。

 

AI医療機器の役割は?

AIは人間が一生かかっても覚えることができないような大量のデータを覚えることができるので、医師がAIとともに診断を行うということは、優秀な医師に側に付いてもらって、常にアドバイスをもらいながら診断を行うことに近いのです。

 

また、検査から診断までの責任を負う医師にとって、病気の見逃しをしたくないという心理的な負担を軽減するというメリットもあると考えられています。

 

患者さんにとっては、より精度の高い診断によって病気を早く見つけてもらえたり、見逃しのリスクを減らせたりするというメリットがあります。

 

AI医療機器を開発するスタートアップで構成する業界団体「AI医療機器協議会」について

現在日本では、大手企業からスタートアップ企業までさまざまな会社がAI医療機器の研究開発を行っています。

 

そのなかでもAI医療機器を開発するスタートアップ企業が集まり、国や社会に対しての発信を通じてAI医療機器の正しい理解と認知を獲得し、社会に普及させるための活動を行っている業界団体があります。それが「AIを活用した医療機器の開発と発展を目指す協議会(略称:AI医療機器協議会)」(https://aimd.jp/)です。

 

 

2023年7月時点で、21社のスタートアップ企業が加入しています。AI医療機器は大手企業だけでなく、たくさんのスタートアップ企業が研究開発を進めており、それらは医師自らが立ち上げている事例も多く、ニーズとシーズが直結した新たな目線での開発が多いことも特徴で、今後の発展が期待される新しい産業なのです。

 

おわりに

いかがでしたでしょうか。

 

 

AI医療機器という名前を聞くと、「AIが人間の代わりに診断を行うの?」と感じてしまう人がいるかもしれませんが、そうではありません。あくまでAIは医師の補佐をする役割で、病気の早期発見や見逃し低減に役立てることが期待されている道具なのです。

 

AI医療機器は現在もさまざまな分野で開発が進められています。

 

医療現場での導入は今後拡大していくことが期待されていますが、技術の進歩は非常に早いので、数十年後には「昔はAIのサポートなしで医師が診断を行っていたなんて考えられない」と言われる時代が来るかもしれませんね。

 

 

これを機にみなさんが少しでもAI医療機器について興味を持っていただけたら幸いです。

 

次の記事では、AI医療機器開発に取り組む日本のスタートアップ企業の取り組みをご紹介します。

 

 

※こちらの記事は『AI医療機器協議会』協賛の記事です。

 もっとAI医療機器協議会について知りたい!という方はこちらをご覧ください。

 https://aimd.jp/

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