【コラム】医療機器業界の企業業績は?-2022年度版-

【コラム】医療機器業界の企業業績は?-2022年度版-

こんにちは、医機なび事務局です。

 

就職活動の際、業界・企業研究を進めていくと気になるのが企業の業績。「医療機器業界の企業の業績ってどうなっているんだろう…」と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

昨年に引き続き、医療機器業界の業績について、企業の決算短信をもとに集計したMEジャーナル編集長 半田良太さんに教えてもらいました。

 

<参考>前回の内容はこちら

 

医療機器メーカーの2022年度業績と、次期業績予想

今回のトピックでは、医療機器メーカーの業績動向を、最新データにアップデートします。

「医機なび」をご覧の就活生の皆さんは、医療機器業界について、「患者の健康に貢献できる」「社会的意義がある」と、興味・関心を抱いている方々が多いと思いますが、それだけにとどまらず、「景気の動向に過度に左右されず、安定感のある業界」であることも、お判りいただけるのではないかと思います。

 

医療機器メーカーの「22年度業績」は2桁増収

MEジャーナルが、国内で株式を上場する医療機器メーカーの2022年度の業績を集計したところ、46社合計で売上高が前期比12.8%増、営業利益は5.0%減と、増収減益決算となっていることが分かりました。

医療機器業界もご多分に漏れず、物価高や半導体・部材の価格高騰などを吸収しきれず、減益になったと想定されます。

 

日本経済新聞が製造業557社を対象に集計(2023520日付け朝刊)したデータをみると、売上高は16.1%増、経常利益は3.5%減、最終利益は7.8%減となっていることが分かりました。

この比較は、あくまで前年度と比較した増減を示したもの。さらに利益については、営業利益と、経常利益、最終利益と比較対象が異なるため、確たることは言えません。

 

医療機器業界の営業利益率は10.6% 製造業平均の約2

ところが、売上高に占める利益の割合(利益率)に焦点を当ててみると、その印象は大きく異なります。

経済産業省の「2022 年企業活動基本調査確報」(2023629日公表)によると、製造業約1.4万社の営業利益率は5.6%です。MEジャーナルが集計した医療機器メーカーの営業利益率は12.9%(21年度データ)と、利益水準に倍程度の差があることが分かります。

さらに過去3年間の推移と、23年の予想を踏まえると、医療機器業界の営業利益率は1012%台で、コロナ禍の緊急事態宣言などの影響があった年度でも、安定的に推移していることが確認できます。

 

ただ経産省の調査は2261日現在のデータで、2020年、2021年のデータが混在しており、MEジャーナルの集計データとの「期ズレ」が生じていることには留意が必要です。

 

★図表 営業利益率の比較(単位%)

1)「医療機器業界」の数値はMEジャーナルの調査で、対象企業は45社前後の平均値。

2)「製造業」「企業全体」の数値は、経産省の「企業活動基本調査」から抽出。

3)「製造業」は約1.4万社、「企業全体」は約3.4万社の平均値。

 

富士フイルム、オリンパスの営業利益率「トヨタ・ソニーを凌駕」

「期ズレ」の影響を補正する意味からも、22年度の業績を個別企業でも比較してみたいと思います。

日本の製造業を代表する、世界的企業のトヨタ自動車の営業利益率は7.3%、ソニーグループの営業利益率は10.5%です。

 

これに対し、富士フイルムホールディングス(ヘルスケアセグメント)の営業利益率は10.9%、内視鏡の世界的メーカーであるオリンパスは21.2%と、日本を代表する製造業と比べても遜色ないどころか、それを上回る水準にあることが確認できます。

 

小規模ながらも営業利益率30%超「歯科用機器のナカニシ」

医療機器業界を研究している就活生の皆さんからすると、「医療機器業界は比較的規模が小さいメーカーも多く、本当に実態を反映しているのか」と疑問を持つ方も、少なからずいらっしゃるかもしれません。

そのため、比較的小規模の医療機器メーカーも取り上げたいと思います。

 

歯科で革新的な医療機器を相次いで生み出しているナカニシ。

売上高500億円未満と小粒ではありますが、営業利益率は驚異の31.6%という数値をたたき出しています。さらに営業利益率30%超の医療機器メーカーはもう1社存在します。

つまり、医療機器業界は、日本経済をけん引するような規模感こそまだないものの、①業界全体の業績は高水準で安定し②営業利益率30%超の“一芸に秀でた世界的な優良企業”も散見されることが確認できました。

 

23年度は「減益」→「増益」に

それでは、今後の見通しはどうでしょうか。

MEジャーナルが23年度決算予想を公表した40社を集計したところ、売上高は3.5%減、営業利益は6.2%増と、減収増益を見込んでいます。営業利益率は11.6%と、前期から1ポイント上乗せとなります。

医療機器業界は、新型コロナウイルス感染症による受診抑制が緩和傾向にあるものの、急激な円安、サプライチェーンの混乱、半導体や部材の不足など、厳しい経営環境が続きますが、比較的堅調な業績予想といえそうです。

 

ちなみに、日経新聞の製造業業合計の業績予想をみると、売上高は1.9%増、経常利益0.2%増、最終利益3.8%増。経常利益率は7.3%、最終利益率は5.1%です。

 

 

【医療機器メーカーの業績についての留意点】

MEジャーナルが調査・集計したのは、20224月期、6月期、7月期、8月期、12月期、233月期の決算を発表した、国内で株式を上場する医療機器メーカー。

・医療機器以外の事業を手掛ける“兼業メーカー”については、医薬品や化学事業などの売上高も含まれるため、純粋な医療機器の業績を表していない。

 

 

<執筆者>

MEジャーナル編集長

半田 良太さん

 

 

 

いかがでしたか?

 

ヘルスケア・医療機器業界の特徴として「安定的に成長し続けている」ということを聞かれたことがあるかもしれませんが、今回の数字を見るとより実感できるのではないでしょうか。

 

ヘルスケア・医療機器業界は、今後も成長することが予測されております。

 

今回の内容を参考に、今後業界・企業研究を深めてみてはいかがでしょうか?

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