【医療機器体験談】
脊柱側弯症の患者体験談

【医療機器体験談】<br>脊柱側弯症の患者体験談

※上記写真はイメージです。

脊柱側弯症 せきちゅうそくわんしょう チアリーディングで最高の演技

高校1年の春、16歳のときに、学校の健康診断で側弯症かもしれないとの指摘を受けました。側弯症の専門の先生のことを自分で調べて酒井大輔先生のことを知り、その年の8月に湘陽かしわ台病院の酒井大輔先生の外来を受診しました。それまで特に体の異常を感じたことはありませんでしたが、X線検査を受けたら、脊柱側弯症と診断されたのです。

 

診断後はコルセットを着けて、背骨の曲がりを治す矯正治療を行うため、酒井先生が所属されている東海大学医学部付属病院に通院することになりました。コルセットは1日10時間以上着けるように言われたのですが、硬く、着けると動きにくく、苦しかったです。また、洋服の上からでも着けているのが分かってしまうので、毎日の生活が憂鬱 ゆううつでした。

 

高校ではチアリーディング部に所属していました。練習ではコルセットを外して、人を持ち上げたり、飛ばしたりするスタンツという技を行っていましたが、練習が終わると毎回、右側の腰が痛くなっていました。

 

つらかったコルセットの着用

コルセットによる矯正治療は9カ月間続けました。けれど、背骨の曲がりはよくならず、9カ月間我慢した成果はみられません。コルセットで治っているような感覚もあまりありませんでした。このままコルセットを着けて生活するのはきついし、続けても意味がないように思えて、耐え切れませんでした。

 

治さないという選択肢はなかったので、治すためには手術するしかないと思い、酒井先生に相談し、すぐに手術することを決めました。ただ、手術に際して心配だったのは、チアリーディングのスタンツができなくなってしまうのではないかということ。そして、脊椎に金属を付けて固定し、背骨の曲がりを矯正する治療方法についてでした。最初はこんな治療ができるのかよく分からず、不安でした。けれども先生から、手術後リハビリやトレーニングをして、時間がたてば今まで通りの生活もできるし、スタンツもできるようになる、という説明を聞いて、そんなに高いリスクがあるわけでないことが分かり、手術をすれば治ると決心しました。

 

リハビリに励み、仲間と一緒に大会出場

手術は、高校2年の夏休みに受けることになったのですが、入院や手術は人生で初めてだったので、とても緊張しました。朝に手術を受け、次の日の朝までICUにいて、その日から水分が取れるようになりました。そしてその日から早速、徐々にベッドを起こすリハビリを始めました。寝たきりになると足の筋肉が落ちてしまうため、足を動かすリハビリも行いました。3日後からはご飯が食べられるようになり、1週間後には手すりをつかんで歩く練習をし、歩けるようになりました。そして手術から2週間後に退院しました。入院していたころは下を向いたり、15分座っていたりするだけでも痛く、つらかったです。背中に長い定規が入っているような、今まで経験したことのない感覚で、しばらくは普段の生活を送るのに精一杯でした。

 

でも先生からは、手術の1カ月後からは、無理のない範囲なら軽い運動をしてもよいと言われていて、実際1カ月たったあたりから、ダンスをしたり、体育の授業を受けたりすることができるようになったのです。そして、そのころから徐々に体がなじんできて、背中や腰の痛みもほとんどなくなりました。

 

手術前は、脊椎を金属で固定するような手術を受けて、本当にスタンツができるようになるのか不安でした。手術は夏休みの8月。11月には大会の練習が始まります。その11月にはスタンツができるようになるために、リハビリや筋トレをたくさん行いました。

 

できるだけのことをして、手術後1カ月の検診で酒井先生にスタンツの練習を再開してよいか相談したところ、「できそうだったらやっても大丈夫ですよ」と了承をいただいたのです。11月になると、スタンツの練習を再開しました。すると、リハビリや筋トレに励んだおかげか、ブランクを感じず、手術前のように技を決めることができたのです。痛みもそんなになく、「1位を取る」という目標を持って切磋琢磨するチームに復帰できたことが、まずうれしかったです。

 

そして翌年3月のUSA Nationalsという大会に無事出場、仲間と最高の演技ができ、全国大会でなんと優勝することができました。優勝が決まったときは本当にうれしく、信じられない気持ちでいっぱいでした。11月までの3カ月間、リハビリや筋トレをがんばってよかったです。

 

手術から3年経った今では、手術する前と変わらない生活を送っています。見た目に関しても、まったく分からないです。

 

この入院生活を通して、病院で働くいろいろな人に助けられました。そのため私も病院で働き、病気の人を助けたいと思いました。今、大学で栄養学について勉強しているので、将来は管理栄養士として患者さんに栄養指導をしたいと思っています。

 

【担当医からのひとこと】 手術を乗り越え、見事全国大会優勝

脊柱側弯症は背骨、医学的には脊椎骨のつながりである脊柱が、通常よりも曲がる病気です。脊柱は通常、7個の頚椎 けいつい、12個の胸椎、5個の腰椎が関節で連結して成り立っています。地球上で生きる人間は常に重力にさらされています。脊柱は言葉通り体を支える柱であり、体の中でも重い頭部や胸部を重力に対してバランスよく支えるために、横から見たときにS字の弯わんきょく曲があることが、負担を分散させ、よいとされます。思春期によくみられる脊柱側弯症とは、成長時に背骨がねじれ、側方へ曲がってしまう成長障害です。日本では、医学管理が必要な側弯症と診断される新規患者数は11~14歳の思春期人口の約1%、13~14歳男子は0・25%、女子が2・5%、男女比は1:11と、圧倒的に思春期の女子に多いとされています。思春期特発性側弯症が問題となるのは、思春期に入って突然側弯症を発症し、人によっては急速に進行してしまう点です。早期発見するには学校検診で見つけるか、本人や家族が変形に気づくかしかないため、かなり進行してから来院される患者さんもいらっしゃいます。手術治療も技術や安全性が10年前に比べ飛躍的に進歩しており、早期発見、的確なタイミングで治療を行えば、多くの場合、側弯症でない方と同じように一生を過ごすことが可能となっています。

 

最後に、はなさんが今回の入院、手術を乗り越えてチアリーディングにおいて見事高校日本一に輝かれ、さらには入院生活がきっかけで医療現場での仕事を志すに至ったことは、主治医としてもこれ以上うれしいことはありません。はなさんの輝かしい未来へエールを送ります。

 

側弯症の矯正固定術

写真上:スクリューとロッドによる背柱の矯正イメージ (左:後方・右:側面)
写真下:椎骨に挿入するスクリュー99

脊柱は椎骨と呼ばれる骨が柱状に連なったもので、側弯症では脊柱が横に曲がり、ねじれを伴う。進行すると、腰・背中の痛みや内臓の圧迫を来し、手術の適応となる。代表的な手術法は背中側からの矯正固定術で、金属のネジ(スクリュー)を椎骨に挿入し、そこにロッドと呼ばれる金属の棒を装着する。このロッドを操作することにより、曲がりとねじれを矯正して固定し、側弯が進行しないように脊柱を安定させる。

 

 

 

 

 

 

 

「医療機器体験談」は一般社団法人 米国医療機器・IVD工業会出版のエッセー集『出会えてよかった』第1集~第3集より引用しています。

URL: https://www.amdd.jp/technology/essay/

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