【医療機器体験談】
1型糖尿病の患者体験談

【医療機器体験談】<br>1型糖尿病の患者体験談

※上記写真はイメージです。

1型糖尿病 いちがたとうにょうびょう FGMで安心・安全の出産へ

幼少時から兄の影響で野球に打ち込み、スポーツを楽しむ毎日。けれど、小学校高学年になったころ、体重が4キロも減り、喉が渇いて手を洗う水でさえ飲むようになりました。何かおかしいと思いながらも痛みがないので、「まあ大丈夫だろう」と現実から目を背けていたのですが、12歳のとき、小学校の尿検査の異常で地元の病院へ。診断は1型糖尿病でした。一生付き合っていくしかない「不治の病」です。ただ、「死ぬんではないか」と不安でたまらなかった私は、「生きていける」ということに正直ほっとしました。

 

それでも、診断後から始まった闘病生活は簡単なものではありませんでした。12歳の子どもが毎日5回、インスリンを自分で注射しなければならないのです。さらに、毎日8回指先に針を刺し、米粒くらいの血液をしぼり出す血糖測定。時間もかかるし、痛みが強い。摂取カロリーは決まっていて、もっと食べたいのに食べられない、またその反対もありました。当時の主治医から激しい運動はあまり勧められないと言われましたが、私から運動を取ったら何も残らないと思ったので、自分の体と相談しながら、中学から陸上を始めました。

 

FGMで血糖管理も体調管理も楽に

発症から10年以上たち、血糖の変動状態を簡単に把握できるというFGM(フラッシュグルコースモニタリング)システムのことを友人から教えてもらいました。

 

血糖測定は「痛くなければ信頼できない」と思い込んでいましたが、FGMには本当に驚きと、パッと光が差したような喜びが詰め込まれていました。陸上長距離種目の選手だった私は、いつも練習中や試合中の血糖管理に悩み続けていたので、現役時代からこれが使えていればと、悔しかったです。それまで何百回と指先に穴を開けて痛い思いをしていましたが、FGMはまったく痛くない上、自動的に測定されたデータが記録されるので振り返って確認することもできます。500円玉大のセンサーを体に着けておき、血糖値の状況を知りたいときは、そのセンサーにリーダーという手のひらサイズの機器をかざすだけで、一瞬で値がリーダーに表示されます。画面には過去8時間分の変化を記録したグラフが示され、またこれからの高血糖や低血糖のリスクも予測してくれるので、行動予定や補食の判断など、自分の体と相談できるようになりました。さらに、それまでは主治医の指示を待つだけでしたが、自分から不安なことや意見を言えるようになりました。血糖値の変化を、点ではなく、連続した線として簡単に見ることができるので、糖尿病の小さなお子さんをお持ちのご家族の安心にもつながると思います。

 

赤ちゃんを抱き、「生きていてよかった!」

子どもはずっと欲しいと思っていましたが、インターネットの口コミに、1型糖尿病で出産は大変と書かれていることが多く、あまり閲覧しないようにしていました。

 

ただ血糖値のコントロールが大切ということは分かっていたので、日ごろから値を気にして、毛細血管を傷つけないよう、またストレスがないように過ごしていました。妊娠を知ったときは「嘘でしょ!?」と、まずは不安が頭の中を駆けめぐりました。

 

仕事や活動しているバンドのライブのこと、私の体が持つのかな、など……。母に妊娠を伝えると、「私の初めての出産と同じ年やねえ」の言葉に現実味が出て、不安と喜びと切ない感情で少し涙ぐんだのを覚えています。でもそれからは楽しみしかなく、みんなに祝福されて産むための準備に取り掛かりました。

 

主治医の大阪市立総合医療センターの福本まりこ先生は妊娠糖尿病の専門家でもあり、心強かったです。インスリンの注射も福本先生と相談し、皮下に刺した細いチューブを通して持続的に注入できるポンプ方式に変えました。それでも普段のインスリン量では血糖値が下がらず、妊娠初期のころは夜中の高血糖に悩まされました。その反動で明け方は低血糖になり、何度も目が覚める日々が続きましたが、FGMの測定結果を福本先生と見ながら相談し、インスリン量を微調整することで解決できました。わざわざ起きて血糖値を測る必要もないし、眠っている間の値も記録してくれる機能のおかげで、睡眠時低血糖など問題が起きていれば気づくこともできました。

 

臨月からは血小板減少症に悩まされ、管理出産のほうが出産時のリスクが軽減できるとのことで、全身麻酔の帝王切開で出産しました。そのため産声を聞くことはできなかったのですが、翌日の夕方に初めて娘と対面し、抱いた瞬間、母としての自覚、将来への希望、そしてわが子の愛しさに「生きていてよかった!」と心から思うことができました。

 

産後は夜泣きで十分に睡眠が取れず、FGMに出会わなければ血糖測定もおろそかになっていたと思います。育児で疲れていてもFGMの自動モニタリング機能のおかげで、授乳の際には血糖値が下がることが分かり、とても助かりました。産後は少しずつインスリン量を減らしたこともあり、低血糖や体調不良がなくなっていきました。

 

今は、この経験を人に話す場をいただいたり、産後も変わらず仕事をいただけたりしていることに感謝しています。1歳になった娘とは、愛犬2匹といろんな所にピクニックに行き、一緒にたくさんの景色を見ていきたいと思っています。娘のために始めた編み物も趣味となりつつあり、娘にたくさんの楽しみをもらっている毎日です。

 

妊娠、出産は自分の体の中に自分とはまったく違う命があり、 十月十日 とつきとおか 、私は奇跡の日々を娘に過ごさせてもらいました。初めて子どもを抱いた感動は忘れません。

 

FGMは、診察時に自分の意見を言ったり、相談したりするなど、糖尿病患者が主治医と“共に”病とどう付き合っていくかを話すための道具の一つになるでしょう。

 

これからFGMもどんどん進化していくと思いますが、「痛くない治療」が当たり前の世界になってほしいと願います。その先駆けとしてFGMが点ではなく、線で広がっていってほしいと思います。

 

【担当医からのひとこと】 FGMできめ細かい対応可能に

インスリンなどの注射製剤で血糖管理をしている方には、その重症度に応じて指尖穿刺 しせんせんしによる血糖実測を週数回から1日8回以上行っていただき、日々の実測血糖値を基に治療内容、特にインスリン量を調整します。しかし、この実測では測定時点でしか分からないため、食後の急峻 きゅうしゃんな高血糖や、食前・夜間就寝中の低血糖を見逃すこともあります。FGMのセンサーは装着中、測定し続け15分ごとに平均値を記録します。本体をセンサーにかざすことで記録されたグルコース変動を確認でき、より最適な治療提案を可能にします。ただ、血糖変動が大きいときや体の水分量などの影響で、センサーグルコース値が実測値と乖離 かいりする場合もあり、主治医の指示通り1日複数回の実測も必要であることにも留意してください。

 

糖尿病を持つ女性が妊娠・出産を考える場合、妊娠初期の高血糖が胎児奇形率を上げることが分かっています。妊娠してから血糖をコントロールして改善するのではなく、妊娠前からしっかりとコントロールし、主治医の許可のもと計画妊娠をしましょう。妊娠中も母体、胎児、新生児合併症予防のため、血糖値は食前70~100、食後2時間120未満(単位はミリグラム/デシリットル)という厳格なコントロールが必要です。そのため睡眠時などの無自覚低血糖のリスクも増加しますので、深夜を含む1日8回以上の頻回の血糖測定が必要となることもありますが、FGMを妊娠中に使用することで、夜中に起きて実測するなどの負担が軽減されます。さらに、FGMでは測定のたびにこれからの血糖変動の予測が5段階の矢印で表示されるため、補食のタイミングやインスリンの追加注射などの判断材料ともなり、実測のみよりもきめ細かい調整が可能になると考えられます。

 

FGM(フラッシュグルコースモニタリング)

腕に貼付した500円玉大のセンサーを本体(リーダー)でスキャンすることで簡単にグルコース値を測定できる。服の上からでもスキャンが可能で、測定のための採血は不要。センサーは1枚で最長14日間持続的・自動的にグルコース値を測定・記録するため、測定時のグルコース値だけでなく、過去からのグルコース値の動きを「見える化」する。

豊富な血糖変動データに基づく治療方針の決定、生活スタイルの改善により、良好な血糖管理に大きく寄与することが期待されている。

 

写真右:FGMの本体(リーダー)
写真左:腕に貼付するセンサー

 

 

 

 

 

 

「医療機器体験談」は一般社団法人 米国医療機器・IVD工業会出版のエッセー集『出会えてよかった』第1集~第3集より引用しています。

URL: https://www.amdd.jp/technology/essay/

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