【医療機器の使用事例】
急性心筋梗塞になってしまったら
もし急性心筋梗塞になってしまったら、どんな医療機器にお世話になるのでしょうか?今回は急性心筋梗塞を患ったら、検査~治療、入院~退院までの流れのなかで主にどんな医療機器が使用されるのか、ケースを例にご紹介します。
はじめに、急性心筋梗塞とは
急性心筋梗塞は、血の塊(血栓)が血管に詰まって塞がることによって心臓に血液を送ることができなくなり、心臓の筋肉が壊死してしまう病気です。
心臓は血液を全身に送る「ポンプ」の働きをしているため、心臓の働きを低下させる心筋梗塞は命にかかわる病気です。
急性心筋梗塞を含む心疾患は日本人の死亡原因の第二位で、日本の患者数は約173万人にものぼるとされています。また、急性心筋梗塞を発症してから30日以内の病院内での死亡率は6~7%と、非常に高くなっています。
初期症状としては、安静にしていても20分以上継続する胸や背中の激しい痛み・冷や汗・吐き気などがあげられます。
急性心筋梗塞の検査では、どんな医療機器が使われるの?
上記のような急性心筋梗塞の症状がみられ、病院にかかると、まずは検査が行われます。主に次のような内容で、それぞれの目的に応じた医療機器が用いられます。
・問診
主訴(どこが痛いか、いつからか など)や、今までにかかった病気、最近の健康状態などについて聞きとりなどを行います。
・身体所見
血圧測定、心音・心雑音の確認、呼吸音の確認などを行います。
【使用する医療機器】
血圧計、聴診器 など
・心電図
心電計で心電図を確認します。心電図検査は、急性心筋梗塞の診断に最も有用かつ簡便な検査です。心筋梗塞を患っていると、心電図に変化が生じます。
【使用する医療機器】
十二誘導心電計 など
・臨床検査
血液検査(採血・血液生化学検査)も行います。
【使用する医療機器】
注射器、真空採血管、生化学自動分析装置 など
・画像診断
胸部X線写真を用いて、心臓・大血管の形や大きさなどに異常がないか、肺にうっ血や肺水腫・肺水がないかどうかといったことを確認します。また、心臓の動きに異常があるか確認する、心エコー検査も行われます。
【使用する医療機器】
レントゲン、心エコー装置 など
急性心筋梗塞の初期治療ではどんな医療機器が使われるの?
検査で急性心筋梗塞が発見された場合、すぐに治療が開始されます。初期段階では、次のような医療機器が用いられます。
・酸素投与
心臓の筋肉に血がなくなることで起こる障害の発生を軽減します。
・硝酸薬投与
血圧をコントロールします。
・アスピリン投与
血栓の主な原因である血小板の集合を抑制します。
【使用する医療機器】
注射器、シリンジポンプ、酸素マスク など
急性心筋梗塞の治療では、どんな医療機器が使われるの?
初期治療の後には、血管の塞がりを改善して心臓に血液が正常に送られるよう、特別な治療が行われます。ここでも多くの医療機器が使用され、医師や看護師をサポートしています。
①経皮的冠動脈形成術(PCI)
1.CT、カテーテル、造影剤などを使用し、塞がっている血管の位置を確認する(手術前検査)。
2.血管を塞いでいる血の塊を取り除き、血の流れを再開させる。
3.狭くなった血管をバルーンカテーテルで拡げ、血管造影装置を使いながら狭くなった血管が拡がったことを確認する。
4.拡げた血管が元に戻らないようにステントで固定する。
【使用する医療機器】
CT、ガイドワイヤー、バルーンカテーテル、ガイディングカテーテル、血管造影装置、ステント、ペースメーカー、人工呼吸器、器官チューブ など
②冠動脈バイパス術(CABG)
PCIが適応とならない場合には、冠動脈バイパス術が実施されます。これは、血液が流れにくくなった血管の代わりに、血液を流すためのバイパスとなる血管をつなぐ治療です。
手術は全身麻酔後、胸を切り開いて心臓を露出させて行います。脚の静脈などから取ったバイパス用の血管を詰まっている血管の先に接続し、詰まって血が流れていなかった血管に血を流します。
【使用する医療機器】
メス・電気メス、生態情報モニタ、ピンセット、鉗子、人工心肺装置、カニューレ、ドレープなど
急性心筋梗塞で入院したら、どんな医療機器が使われるの?
上記の治療を受けた場合、PCIでは1週間程度、CABGでは2週間程度の入院が必要です。入院時には、点滴や輸液ポンプ・シリンジポンプ・生態情報モニタといった医療機器が使用されます。
このように、急性心筋梗塞の検査~治療の各段階では、たくさんの医療機器が用いられています。医療機器の存在なくして治療は成り立たず、患者さんの生命を救うことはできないでしょう。今回は急性心筋梗塞を例にお話しましたが、他の疾患の治療でも同じことがいえます。これを機に、みなさんが医療機器に少しでも興味を持ってくだされば幸いです。